第152回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は小野正嗣さん(44)の「九年前の祈り」(「群像」9月号)に、直木賞は西加奈子さん(37)の「サラバ!」(小学館)に決まった。
小野さんは4回目の候補での受賞。作品の舞台は大分県の海辺。離婚し、発達に問題を抱えた息子と実家に戻った主人公は、9年前のカナダ旅行で見た同郷女性の一心に祈る姿を思い起こす。悲しみを癒やすささやかなつながりを描いた。
選考委員の小川洋子さんは「内海を抱くように伸びた半島の土地が、少年と主人公の女性を丸ごと受け止めている。小野さんがこだわってきた、土地の持つ力を小説として結実させた」と評した。
西さんは2度目の候補での受賞。父親の赴任先のイランで生まれた主人公の「僕」が、大阪やエジプト、東京を舞台に小説家へと成長する過程を描く長編。個性的な人々との出会いが半自伝的に語られる。
選考委員の林真理子さんは「人を救うものは宗教でも金でも成功でもなく、それをつかみ取るまでの出会いの中にあることを、前向きにスケール大きく描いている。後半は破綻もあるがそれをしのぐ力強いメッセージに感動した」と語った。
受賞者には正賞の時計と副賞100万円が贈られる。[2015/01/15]
via http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015011500881&m=rss
・第152回その他の候補作
■芥川賞
上田岳弘『惑星』(新潮8月号)
小谷野敦『ヌエのいた家』(文學界9月号)
高尾長良『影媛』(新潮12月号)
高橋弘希『指の骨』(新潮11月号)■直木賞
青山文平『鬼はもとより』(徳間書店)
大島真寿美『あなたの本当の人生は』(文藝春秋)
木下昌輝『宇喜多の捨て嫁』(文藝春秋)
万城目学『悟浄出立』(新潮社)